浮気の定理
「あ……えっと……

いっ、飯島さんが風邪引いたってきいて、心配になって……薬とか、いろいろ買ってきたんですけど!」



恥ずかしさを悟られないように一気にそう言うと、ドアノブにかけてあったレジ袋を、彼に勢いよく押し付けた。



一瞬びっくりしたような顔で固まった飯島さんは、それを受け取ると、ありがとうと言って微笑む。



その笑顔に癒されるのを感じながら、喜んでくれたことにホッとしていた。



「それじゃあ、帰りますね?お大事にしてください」



当初の目的通り、渡すものも渡したことだし、もう用はない。
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