浮気の定理
「……あ、あの?」



彼を見上げてその手の意味を問う。



彼はハッとしたように手を離すと、困ったように弱々しく笑った。



「すみません、あの、じゃあ……そうだ!お粥!お粥とか作ってもらえませんか?」



頼られたらほっとけない性格は、こんなとき断るすべを知らない。



お茶ではなく、お粥を作るという名目なら、部屋に入ってもいいんじゃないかと思えた。



なにより、飯島さんの私を見る目は寂しそうで、このまま帰ってほしくないんだと、訴えてるような気がしたから……
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