浮気の定理
玄関を上がった短い廊下には、ドアが4つあった。



一つはトイレ、一つは浴室だと思う。



一番奥の扉がリビングで、手前のドアが寝室なのだとなんとなく思った。



リビングに繋がる磨りガラスがはまった扉を開けると、横に対面キッチンと簡単なカウンターが見える。



黒で統一された男の人の部屋って感じのリビングだ。



ぐるりと部屋の中を見回すと、仕事で見せる几帳面さとは違う、ずぼらな顔が見えた。



黒のソファーにバサッと置かれた衣類や、床に散らばる雑誌を見て、なんだか可愛く思えてしまう。



クスッと思わず笑ってしまうと、後ろで彼が恥ずかしそうに口を開いた。
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