浮気の定理
彼に優しく触れられていると、なんともいえない満ち足りた気分になる。



されるがままに身を任せていると、ふいに彼の手がもう一本増えて、両頬を挟まれた。



それは、一瞬だったと思う。



ぐっと引き寄せられて、気付いたら彼の唇に自分の唇が重なっていた。



驚く間もなく……当たり前であるかのように、ごく自然に……



キスなんて何年振りだろう?



そんなどうでもいいことを考えながら……



「ご、ごめん!」



ハッとしたように、突然唇が引き離された。



どうやら寝ぼけていた彼は、完全に目を覚ましたらしい。
< 415 / 730 >

この作品をシェア

pagetop