浮気の定理
謝られてなんと答えたらいいのか、わからなかった。



自分も特に拒否しなかったのだ。



受け入れてしまったことが、今更ながらに恥ずかしくなる。



何も言えずに黙ったまま俯くと、彼は焦ったように言い訳を口にした。



「ほんとにすみません!あの……こんなつもりじゃなくて……夢だと勘違いしてました……ゴホッゴホッゴホッゴホッ……」



一気に喋りすぎたんだろう。言い終わると同時に咳き込み始めた。



止まらない咳に苦しそうに顔を歪ませながら、少し涙目になった瞳で私を見る。



急いで背中を擦って、落ち着かせようとしたとき、彼のパジャマがぐっしょりと濡れていることに気付いた。
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