浮気の定理
「とりあえず着替えましょうか?替えのパジャマってありますか?」



私はさっきのことなんかまるでなかったかのように、冷静に事務的にそう問いかける。



「あそこの……ハァ……引き出しに入ってます。あの……ほんと、すみません……」



目線でクローゼットの中だとわかった。



立ち上がりそこを開けると引き出しが見える。



取り出して、ついでに下着も探してタオルと一緒に彼に渡した。



気まずそうな目が探るように私を見ていたけれど、呑み込まれないようにわざと目線をそらす。




「じゃあ、私は外に出てますから、着替えてください。それからお粥も食べれそうなら一口だけでも食べて、薬も飲んじゃってくださいね?」




一気にそれだけ言い切って、おもむろに腕時計に目を落とした。



「あ、ごめんなさい!もうすぐ娘たちが帰ってくる時間なので、帰ります」
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