浮気の定理
あの日のことが鮮明に頭に浮かぶ。



彼に愛された幸せな時間は、あっという間に脆くも崩れ去った。



天国から地獄に落ちた瞬間だ。



彼の指が……肌が……唇が……



優しく私に触れる。



強弱をつけてやわやわと……



和也とのそれは苦痛でしかなかったのに、彼との時間は夢のようだった。



自分がこんなに潤うんだということに、驚きと戸惑いと恥ずかしさでいっぱいになる。



だから止められなかった。



欲望の赴くままに、お互いを素直に感じながら、私たちは夢中で愛を確かめあった。
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