浮気の定理
「大丈夫……今日は安全日だから」



気付けばそんなことを口走っていた。



もしかしたら顔がひきつっていたかもしれない。



それでも出来るだけ笑顔を作って、彼の顔を覗きこみながら安心させるようにそう言った。



彼との行為はいつも不意討ちで……



最初のキスにしたって寝ぼけていたわけだから笑える。



あのキスのお詫びにと食事に誘われて、のこのこ出掛けて行ったことを思い出す。



待ち合わせをして、夫以外の男性と素敵なお店でランチをするというシチュエーションは、長い間専業主婦だった私にとって夢みたいな出来事だった。
< 424 / 730 >

この作品をシェア

pagetop