浮気の定理
和也はお洒落な店を嫌う。



たくさん食べれて気楽に入れる店が、まだ付き合っていた頃から和也は好きだった。



堅苦しいのが嫌なんだといつか言っていたような気がする。



私だってそういう店が嫌いなわけじゃない。



けれど時には、お洒落なお店で自分は特別なんだと思わせてくれるようなシチュエーションも欲しい。



自分のために美味しくて素敵なお店を選んでくれたという行為に、女性は憧れるものだ。



だから飯島さんとの食事は、私をドキドキさせた。



柄にもなくワンピースなんか着ていったのも、彼に少しでも女性らしいところを見せたかったからだ。
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