浮気の定理
コーヒーを飲み終えてしまうことが、こんなにも寂しく感じたことはない。



少しでも長く彼と一緒にいたくて、わざとゆっくり味わうようにコーヒーを飲んだ。



だけどいつかは訪れる、帰らなくてはならない時間。



最後の一口を思いきって飲み干す。



時計はすでに12時を回りそうだ。



いい加減、家に帰らなくちゃならない。



お互い何も話すことなく、コーヒーを飲むだけだったのに、私はなんともいえない穏やかな気持ちになっていた。



無言でいることが苦痛でないなんて、なかなか経験できることじゃないと思う。
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