浮気の定理
「……ごちそうさまでした。それじゃあ、帰ります」


もう少し一緒にいたいと思う気持ちを押し込めて、私はカップを持って立ち上がった。



そのままシンクにカップを置きに行く。



気付くと彼も後ろから着いてきていて、私の背中越しに自分のカップをシンクに置いた。



背中に彼の体温を感じる。



後ろを振り向けなかった。



体が奥から熱くなるのがわかる。



早く離れて欲しいのに、彼は動く気配がない。



ふいに彼の腕が伸びてきて、私を後ろから包み込むように抱き締めた。



こんなのダメだってわかってるのに、振りほどけない。
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