浮気の定理
ふとまた視線を感じた。
振り向くとやはり和也がこちらを見ている。
私はにっこり微笑むと和也に優しく尋ねた。
「コーヒーでも飲む?」
すると和也はフッと顔を緩めて、あぁと答える。
疑われているのかもしれない。
でも絶対に死ぬまで真実を話すつもりはなかった。
だから、多少の居心地の悪さは甘んじて受け止めるつもりだ。
娘たちのためにも、今ここで妻や母であることを放棄するわけにはいかない。
この先、なん十年も和也と共に歩んでいかなければならないのだから……