浮気の定理
真由の選択③
あの日――
山本と私は偶然、秘密を共有することになった。
そう、山本が止めるのも聞かずに、水落がいつも飲んでるという店に潜入した日のことだ。
何人かで飲んでいた水落が一人になるのを見計らって、声をかけたのは他でもない私だ。
「隣、よろしいですか?」
私にしては珍しく胸元の大きく開いたセクシーな服装に濃いめの化粧。
いつもは可愛らしい印象にしかならない容姿を、頑張って大人っぽく仕上げたつもりだった。
「どうぞ」
最初は興味なさそうにそう言った水落も、横に座った私を見るなり、急に態度を変える。
「この店、よく来るんですか?」