浮気の定理
「いいですねぇ

おじゃましちゃってもよろしいんですか?」



甘えたような声色で、上目遣いにそう言えば、もちろんですと水落が興奮するのがわかる。



「じゃあ、私……実家暮らしなので、今日は遅くなるって電話してきてもいいですか?」



しなだれかかるように、水落の腕に胸を押し付けながら、私もまた酔っぱらってるように見せかけた。



「もちろんです、なんなら泊まってくるって連絡してくれてもいいですから」



ニヤニヤしながらそう言った水落の言葉には答えずに、ちょっと失礼しますね?と電話をかけにいくふりをして席を立った。
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