浮気の定理
水落のアパートは綺麗とは言い難いものだった。



でもセキュリティとかエレベーターとか近代的でない分、何かあったときに山本が踏み込みやすいかもしれない。



水落に続いて外階段を昇ろうとしたとき、目の端に人影を捉えた。



階段から少し離れた場所に立っている。



山本だと確認してから、水落に気付かれないように先を急がせた。



「203号室なんですね?」



山本に聞こえるようにそうわざと声に出して言うと、水落は汚くてごめんね?と言いながらドアを開けた。
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