浮気の定理
先に私を中に入れようとする水落に、靴が脱げないふりをして、その場にしゃがみこむ。



「あ、先に入っててください。あとから行きますから」



そう言うと、水落は特に気にすることもなく、コンビニの袋をぶら下げて奥へと入っていった。



後ろを振り返り、鍵が開いていることを確認する。



それからさして脱ぎづらくもない靴を簡単に脱ぐと、水落の待つ部屋へと向かった。



バッグに手を忍ばせる。



時々、いろんな男と肌を重ねはするけれど、誰でもいいわけじゃない。



少なくとも嫌悪感を持つ相手とは絶対にしないだろう。
< 519 / 730 >

この作品をシェア

pagetop