浮気の定理
「どうぞどうぞ、こっち、座って?」



そう手招いて水落は自分の隣の座布団を指差す。



水落が座っているのは、二間続きのうち、手前の居間らしき部屋だった。



奥の部屋には敷きっぱなしなんだろう布団がチラリと見える。



石油ストーブの臭いが充満した部屋は、余計に古い印象を与えた。



安っぽいテーブルに無造作に置かれた缶ビールやつまみは、さきほどコンビニで買ってきたものだろう。



不自然にならないように部屋の中を素早くチェックする。



目当てのものは、テレビの隣にあった。



黒のローチェストの上にテレビと一緒に並んでいる。
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