浮気の定理
その位置を確認してから、ゆっくりと水落の隣へと歩いていく。



目の前には顔を真っ赤にした酔っぱらいが、いやらしい笑みを浮かべて座っていた。



一瞬、躊躇ってしまうほど寒気がしたけれど、同時にこんな男に桃子が陵辱されたのだと思うと、怒りが私を後押しする。



湿った座布団に腰を下ろすと、酒臭い顔をこちらに向けながら、私の肩を力強く抱き寄せてきた。



もう少しだけ情報収集してからと思ったけれど、限界だった。



気持ち悪くて吐き気がする。



鞄に忍ばせていた物をそっと取り出すと、思いきり水落に押し付けた。
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