浮気の定理
真由ちゃん、と何度も呼ぶ山本の声が小さく漏れ聞こえる。



それでも水落には聞こえない程度のボリュームだろうと、そのままそれを放置した。



後ろ手に縛られ、何がなんだかわからないと言った顔で、水落が私の顔をまじまじと見る。



無い頭で、きっとここまでの経緯を思い出しているに違いない。



「な……んで?お前……なん…なんだよ!」



ようやく自分の状況を把握できたのか、水落はこちらを睨みながらそう叫んだ。



にっこり微笑みながら、水落を見下ろす私は、彼の目にどう映っているんだろう。
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