浮気の定理
気がついたら涙がこぼれてた。



嬉しかったんだと思う。



そんな私を見て山本は慌てたように顔を覗き込んだ。



きっと本当は怖かったんだ。



叱られたことで、今まで張り続けていた緊張の糸がプツリと切れたのかもしれない。



「真由ちゃん、怒鳴ったりしてごめん」



そう言いながら、優しく胸を貸してくれる山本は、父より誰より安心できた。



髪を撫でてくれる大きな手も、心地よくてずっとこうしていたいと思ってしまう。



「真由ちゃんさぁ……」



そう優しく声をかけられて、ハッとした。
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