浮気の定理
山本は桃子のものなのに……



もう雅人さんの時みたいな思いはさせたくない。



そっと山本の胸を両の手で押して、ごめんなさいともう一度言ってから彼から離れた。



髪を撫でていた行き場を無くした手を、山本はキュッと握って続けて話し始める。



「木下の旦那のとこ、行く気だろ?」



図星を指されて、どう答えていいかわからなかった。



今、心配かけて叱られたばかりだというのに、また心配をかけることになる。



だけど……だからって気持ちは変わらない。
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