浮気の定理
――好きな人じゃ弱いのかな?



私はぼんやりとそんなことを思う。



だったら……



「実は今、付き合ってるのよ、その人と

あなたよりもずっと若い、私と同じくらいの彼が出来たの

わかるでしょ?

どっちを選ぶのがあたしの幸せかなんて……」



真剣な表情で、そう言えば、北川は目をパチクリさせて私を見る。



それが本当なのか嘘なのか、推し量っているのかもしれない。



「北川さんとの時間はとても楽しかったし、後悔はしてないの

でも、もうおしまい。家庭を壊そうとしているあなたに興味はないし、それに……」



一旦言葉を切って目を伏せてから、もう一度北川を見た。



「あたしはその人を選んだの。あなたじゃない」
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