浮気の定理
途端に北川の顔色が変わる。



さっきまでの余裕さえ浮かべた笑みとは違う、焦りと嫉妬と失望の色。



次の瞬間、ものすごい剣幕で私の両腕を掴むと、北川は激しく揺さぶった。



「嘘だろ!?嘘だよな?

真由は僕が好きだったんだ

そう何度も言ってくれたじゃないか!」



静かなbarに似つかわしくない場面。



当たり前だけど、さすがにいつも素知らぬふりをしてくれていたバーテンダーの彼が、北川に声をかけた。



「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので、申し訳ございませんが、お静かに願います」
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