浮気の定理

それから数日――



山本は約束通り仕事帰りに私を送ってくれていた。



自分が残業で抜けられないときは、わざと桃子と飲みに行くよう仕向けてくれる。



北川はといえば、あれからなんの連絡もなかった。



以前は会えなくても定期的に連絡をくれていたから、不気味といえば不気味なんだけれど……



怒っているのか、諦めたのか、どちらにしても、このまま疎遠になってくれるといいなと、願うばかりだった。



そんな日が何日か続いて、いつものように山本に送られて、自宅近くまで歩いていたとき。



ふいにスマホの着信音が鳴った。
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