浮気の定理
「そ?じゃあ、もしなんかあったら電話しなよ?

俺はいつでも大丈夫だから、ね?」



優しい口調で山本はいつも私を甘やかす。



友達にしては過剰なほどのそれに、私はいつも戸惑っていた。



だけど、桃子のときだってそうだったのだから、これは山本の性格なんだろうと思う。



「ありがと。じゃあその時はよろしくお願いします」



わざとお辞儀をしながらそういうと、山本はジトーっと疑いの目を向ける。



「そんなこと言いながら、なんかあっても連絡してこないんだよなぁ……この子は」



20㎝は違う山本の顔を見上げながら、私は思わず苦笑した。
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