浮気の定理
真由の話でひとしきり盛り上がった頃、ちょうど料理が運ばれてきた。



雨の中、ようやく辿り着いたのはビルの五階に入っている、豆腐懐石のお店。



和食だけれど、個室は椅子とテーブルになっており、コートをかけるクローゼットや、自分たちで淹れられるようにお茶のセットも置いてある。



棚には上品に生けられたピンクに色づいたシャクヤクの花が、縦長の漆黒の花器によく映えていた。



なんとなく誰かの家に遊びに来たような、そんな気持ちになる木の温もりの落ち着いた空間。



食前酒の青梅が入った梅酒で乾杯する。



次々に運ばれてくる豆腐料理は女性に優しい味がした。
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