浮気の定理
「なんでもない……の

ほんとにごめんなさい……もう……大丈夫だから……」



それだけ言って涼子は、ありさから顔を背けた。



あからさまだったかもしれない。



でも今の涼子にはまだ、ありさを許すだけの度量を持ち合わせていなかった。



みんなが不思議そうな顔で涼子を見ている。



ありさ自身も涼子の態度がおかしいことに首を捻っていた。



「もう、平気だから……そろそろ出る?」



まだ残っている溶けかけのアイスには手をつけずに、涼子はそう言って立ち上がる。



少しだけふらついたけれど、あとはしっかりと歩くことが出来た。
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