浮気の定理
自分がいるから話しづらいと思ってくれたんだろう。



山本くんの気遣いに心苦しくなりながら、目をさ迷わせる。



「この長袖にも、関係してるんじゃないの?

あたし、さっきチラッと見ちゃったんだ……痣……あったよね?」



「……っ!」



――まさか、見られてたなんて……



咄嗟に左腕を押さえた。



言い訳……しなくちゃ……なんて言ったら……



「こ……れは……ちょっと、転んじゃって……」



我ながら下手な嘘だと思う。



誰にでもわかるような、そんな……嘘。
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