浮気の定理
「そっか、大丈夫なら良かった」



ほんとにホッとしたようにそう言ったありさを見て、私は複雑な気持ちになった。



わかってる。夫婦の問題なんだってことも、自分がありさに怒る立場でもないことを……



だけど、それでも今は、どうしようもない怒りの感情を止めることが出来なかった。



「それで?今日は急にどうしたの?」



ありさの訪問の意味がわからずに、そう聞いてみた。



「あ……うん

ちょっと涼子に聞きたいことが……あって」



「聞きたいこと?なに?」



ありさは一旦目を伏せてから、思いきったように口を開く。



「私……さ、涼子に何か……したかな?」
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