浮気の定理
ありさに強い嫉妬心を抱いたのは、このときからだったのかもしれない。



だけど彼はありさを許すことを選んだんだ。



自分がどう逆立ちしたって叶うわけないし、そんな立場でもない。



だったら彼との幸せだった時間は秘密にしなきゃならないと思っていた。



だって自分だって、今の生活にしがみついてる。



彼をいくら想ってみても、自分が勇を捨てる勇気なんかあるわけがない。



本当はありさを責める資格なんか自分にないのはわかっていた。



夫がいながら別の男性に思いを寄せる気持ちは、私が一番良く知っているのだから……
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