浮気の定理
だから嘘をついた。



彼を守るための、嘘。



「ありさが……他の人といるとこ……偶然見ちゃったのよ」



「それだけで、子供が和也の子じゃないって、証拠にはならないでしょ?」



「証拠って何よ?

私は、ありさが浮気してるって思ったの

だから、その相手の子だから堕ろしたんだって思うの、普通でしょ?」



「あれは和也の子だよ?変なこと言わないで!」



「いっ……た……」



いつの間にかありさが私に詰め寄っていて、必死の形相で腕を揺さぶる。



私は思わず顔を歪めて、掴まれた腕を押さえた。
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