浮気の定理
「ごめっ……」



異常な痛がり方に、ありさは慌てて手を離す。



二の腕の痣はまだ新しく、赤黒く腫れ上がっていた。



そこを掴まれたのだからひとたまりもない。



「怪我……してるの?」



ありさが遠慮がちにそう聞いてきた。



だけど、こんなみじめな自分をありさにだけは知られたくない。



「うううん、ちょっとこないだぶつけたばかりの場所だっただけだから……大丈夫」



「なら、いいけど……」



正直、もう帰ってほしかった。



さっきみたいな口論が続くなら、一緒にいない方がいいに決まってる。
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