浮気の定理
そんな様子を察したのか、ありさはスッと席を立った。



「ごめん、もう帰るね?

……それから、さっきの話だけど、あの子は……和也の子だから……」



そこまで言い張るのだから、ありさの中では決して無かった事実として葬り去るのだろう。



和也さんにも、事実は伝えていないのかもしれない。



もしかしたら……



本当に彼の子だってこともあるんだろうか?



なんにせよ、彼はありさを許し、そして大事にすることに決めたんだ。



だったら、私が二人を引き裂く理由なんかない。



堕ろした時点で、和也さんと歩んでいくことを、ありさも決めたに違いなかったから……
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