浮気の定理
ハッとした。



私も思わず立ち上がる。



いつも座る席は、私の隣に花、その対面に勇と決まっていた。



すぐ横で怯えている花を庇うように、そのまま覆い被さる。



振り上げられた手は、確実に花を狙っていたから……



「涼子……どきなさい」



行動とは裏腹に、静かな声が部屋に響く。



「どきません!私は何をされてもかまわない!

でも、花に手をあげるのだけは許してください!」



腕の中で花が震えてる。



花には……知られたくなかった。



花にだけは、いいパパでいてほしかったのに……
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