浮気の定理
「……わかった、約束しよう……もういい……」



勇はそれだけ言い残すと、食事はそのままに部屋を出ていった。



パタンとドアが閉まる音が聞こえる。



そこでようやく私は大きく息を吐いた。



そっと花を離すと、涙で濡れた不安げな顔をこちらに向ける。



それから聞き取れないほどの小さな声で、ごめんなさいと謝った。



きっと自分のせいでパパは怒ったんだと……



そのせいでパパとママはケンカしたんだと……



そう思ったのかもしれない。



小さな胸を痛めているんだろう花が、震える指で私の指をキュッと握った。
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