浮気の定理
「真由から話はだいたい聞いた。それで……よかったらこれ、使って?」



差し出されたのは大きな紙袋。



何が入ってるんだろう?と、複雑な思いでそれを受け取った。



この間、ありさとは最悪な別れ方をしていたのに、なんで?という思いが強い。



「……これ」



紙袋の中を覗くと、そこにはたくさんの子供服が入っていた。



「うちの子のお下がりなんだけど、洋服とかあんまり持ち出せなかったんじゃないかと思って……」



同情なのか哀れみなのかはわからないけれど、心配して押し入れを引っくり返して慌てて持ってきてくれたんだろう。



自分はありさの思いなんか何も聞かずに、生まれてこなかった命についてただ責めただけだというのに……
< 687 / 730 >

この作品をシェア

pagetop