浮気の定理
「でも涼子は慰謝料も養育費もいらないから別れてほしいって言ってたのに、自分から払うって言うなんて珍しいよね?」
何杯目かのビールを飲みながら、ありさがそう言った。
「それだけ愛情はあったってことなんじゃない?例え歪んでたとしてもさ」
桃子はビールから烏龍茶に変えて、少し酔いを冷ましてるらしい。
「ま、でも母子家庭になるんだし、あって困るもんじゃないしね?」
真由は相変わらずシビアだ。
涼子としては、もうこれからずっと関わりたくなくて、なんの提示もせずにただ別れてくれればそれで良かった。