浮気の定理
真由が帰ったのをきっかけに、そろそろ帰ろうかと言ったのは涼子だった。



まだ9時を回ったところだけれど、もしかしたら花が起きて待ってるかもしれない、と。



「そうだね?帰ろっか?またたまには夜飲もうね?」



ありさもそう言って立ち上がる。



桃子だけがそこから立ち上がることなく、座ったままだ。



「桃子?どうした?」



涼子が声をかけると、ハッとしたように顔を上げる。



「あ、ごめんごめん

なんかボーッとしちゃった

私、もう少し飲んでくから、先帰っていいよ?」



ありさと涼子は顔を見合わせる。



目で合図しながら、そっとしといてあげようと、じゃあまたね?と言いながらその場を立ち去った。



みんなが帰ってしまった後も、桃子はしばらくその場から動かずにいた。



店員に声をかけられてようやく立ち上がる。



――もう一軒行こうかな?



そんな風に思いながら……
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