浮気の定理
「じゃあ、僕、もう上がりなんで、そこで待っててもらえますか?」



「は?私、一緒に飲むなんて言ってないんだけど」



「急いで着替えてきますから、また後で」



そう言い残して彼は奥へと消えていった。



あいつ、人の話、全然聞いてない。



――どうしよう?そっか、帰ればいいんだ!



律儀に待ってる必要なんかないんだから。



慌ててバッグを掴むと、傍にいた店員にお会計をお願いする。



席から立ち上がろうとしたけれど、思いの外飲み過ぎていたみたいで、思うように足が動かなかった。



よろけながらなんとか会計を済ますと、ふらふらした足取りで店を後にする。
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