浮気の定理
「菊地さんだって、昔はよくお子さんのことで休んでたみたいじゃないですか?

店長に聞きましたよ?」



柔らかい声が頭の上から降ってきた。



165㎝と長身な私は、頭の上から声がする経験をあまりしたことがない。



不思議な感覚にぼんやりしていると、女性の甲高い声が響いた。



「やだぁ、飯島くん!冗談よ、冗談!……ねぇ?清水さん?」



軽く睨みをきかせながら無理矢理作った笑顔は、とても恐ろしくて……



私はブンブンと頭を縦に振ることしか出来なかった。
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