浮気の定理
そんな視線に気づいたのか、ふいに彼が私を見下ろして、その全部が線みたいな顔をクシャっと崩した。



「気にしないでくださいね?お子さんが具合悪いときは、ちゃんと休んでください。大丈夫ですから」



冷たそうだと思ったその顔は、笑うと意外と可愛い。



さながらきつねのマスコットみたいな笑顔とそのセリフに思わずドキッとしてしまった。



萎縮していた体が、ふっと弛む。



それを見て、彼も安堵したように微笑んだ。



「あ、はじめまして……ですよね?僕、ここの副店長をやってます飯島です。清水さん、でいいんですよね?よろしくお願いします」
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