悪魔の運動会


残るはあと2票。


その2票ともリカに入らない限り、佳恵が失格者となってしまう。


逆にもし、次に佳恵の名が呼ばれたのなら、その瞬間、やはり世古佳恵が失格者となる。


両手で顔を覆い、声を押し殺して泣いているリカと、どうしても震えを止めることができなくなった佳恵。


2人の一騎打ちは、呆気なく幕切れとなった__。


「世古佳恵」


「世古佳恵」


残る2票とも、なんと佳恵に入ったからだ。


「世古佳恵、失格」


そう、無慈悲に告げられる。


過半数の5票を投票された佳恵は、激しく首を振っていたかと思うと、急に立ち上がった。


「あんたよ‼︎あんたがやったんでしょ‼︎」


机を乗り越え、リカの長い黒髪を引っ張る。慌てて私たちが止めに入ったが、その必要はなかった。


バシンっ‼︎


猿の着ぐるみが、暴れる佳恵の首にスタンガンを押し付ける。


一瞬だけ体を突っ張った佳恵がグッタリしたところを、そのまま猿が担ぎ上げて教室を出ていった。


「寺脇さん、大丈夫?」


机に突っ伏して泣いている、リカの肩に手を乗せた。


恐らく今回の投票は、みんなが非力なリカを守った結果なのかもしれない。


それだけ佳恵の暴言は目に余るものだったから。


「大丈夫よ、私がついてるから」


背中をさすってやると、少しずつ泣き止んだ。それでもまだ小刻みに震えている。


私が彼女を守らないと。


非力な、寺脇リカを__。






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