悪魔の運動会
【寺脇リカ】
「大丈夫よ」
相原友子の声は、どこまでも優しくて思いやりに溢れていた。
背中を柔らかく叩いてくれる手は、温もりに溢れていた。
いつも私の側に居てくれる。
どうしても独りになってしまう私を気遣って、支えてくれる、それが副委員長の相原友子だ。
机に顔を伏せながら、私はこう思っていた。
__この女、マジでクソうざい。
恩着せがましくてお節介。お世話をしている私、素敵でしょ?どーせ安藤直人へのポイント稼ぎのくせに。
そもそも、私は泣いてるんじゃない。
笑ってるんだ。
可笑しくて可笑しくて仕方がない。
あの世古佳恵の顔。写メに撮って永久保存したかった‼︎
自信に満ち溢れ、お前よりは上なんだと見下した絶対的優位を隠そうともしない。私が失格になると勝ち誇ったあの笑顔が、自分の名前を呼ばれて崩れ去る瞬間。
ああ!胸が空く思いって、こう言うんだ。
散々、私をバカにしてイジメた仕返しだ。
本当ならもっといたぶってやりたかったが、私に不必要に絡んできたお前が悪い。
佳恵の言う通りだ。
私は綱を離した。
縄跳びは飛ばないと仕方がないが、綱なんて握っている振りをして力を入れなければいい。それを目敏く佳恵が見抜いたんだ。
だから私は自分の手のひらを、カッターで切った。
わざと手のひらを血で染めてやった。
さも、綱を握って離さなかったように__。