悪魔の運動会
【間宮旬】
「準備が整いました。これより第3競技を始めます」
俺たちが校庭に出ると、その中央には紅白色の玉がばら撒かれていた。試しに持ってみると、お手玉くらいの重さがある。
それと玉を投げ込む、カゴが横たわっていた。
「それぞれのカゴに玉を投げ入れて頂きます。玉の個数が一つでも多いほうが勝者となります」
いたって単純なルールだ。
問題は誰がカゴを背負うのか?いや、問題じゃない。
「俺が担ぐ」
肩から、ゆうに5メートルはあろうカゴを担ぐ。なかなかの重さだ。
これに玉の重さも加わると、相当な脚力が必要だ。投げた時にカゴに当たる可能性もある。フラついて倒れでもしたら、カゴから玉がこぼれ出してしまう。
しっかり地面に根を張り、仁王立ちするしかない。
それにはまず女子では厳しい。西川と笠井は野球部だ。コントロールがいいはずだから得点源になる。不登校の斉木に任せるのも気が重い。直人には指示を頼みたい。やっぱりここは俺しかいない。
「おい野球部、間違っても俺に当てんなよ‼︎」
あえて軽口を叩いた。
まだ先ほどの投票が、暗い影を落としていたからだ。
無記名投票をしたのは、俺と直人と相原の3人だけ。あとはこぞって世古に入れた。だからといって、俺は責める気にはなれない。それが人っていうものだ。
人は強いし、人は弱い。
「お前はノーコンだからな」「いや、お前に言われたくない‼︎」なんて野球部コンビがふざけ合っていたが。
「ちょっと、あれ見て‼︎」
相原が指をさした。
白組に向かって__。