悪魔の運動会
【山寺正人】
誰がカゴを背負うのか?
お互いが顔を見合わせる。
戸田と野々村のヤンキーコンビは、そもそも担ぐ気なんかないようで、玉の感触を確かめては投球フォームを確認している。ただカゴに投げ入れるだけなのに。
野球部の小林健は、投げる側に入れたほうがいい。
となると、男子は僕しか居ないけど、果たして僕に背負えるだろうか?
女子はどうせ無理だろうし__。
「あたしが担ぐわ」
立花薫が前に躍り出た。
申し訳ないが、それを僕らに止めることはできない。立花なら大丈夫だと、勝手な責任逃れをしていた。
たった1人を除いて。
「待って。私が背負う」
「あんた、これがどれだけ重いか分かってるの?玉の重さもプラスアルファするのよ?」
「__分かってるわ」
そう言って譲らないのは、木崎涼子だった。
「立花さんは、さっきの綱引きで疲れてるでしょ?だからここは私が」
「別に疲れてなんかないけど__分かったわよ」
最後は投げやりだった。背負えるものなら背負ってみろという風で、みんなで木崎がカゴを背負うのを手伝った。
肩に重さが食い込むのを、グッと堪えている様子だったが「大丈夫」と一つ頷く。
これは、勝てるかもしれない。
僕はそう思った。