悪魔の運動会


【立花薫】


一体、なにを考えるのだろう?


カゴを背負っている木崎涼子を見やった。


私が疲れているからなんて、それはウソだ。私は疲れてなど居ない。ちょっと電気で痺れた程度で、今はもうなんともない。


それなのに__?


「おい‼︎なんで涼子がカゴを担いでるんだよ‼︎」


紅組から血相を変えて怒っているのは、安藤直人だ。


そりゃそうだろう。


普通なら男が背負うべきだ。自分の恋人が力を強いられるとあっては黙っちゃいない。


「知らねぇよ‼︎自分が担ぐって言ったんだからよ‼︎」


戸田裕貴の言葉は、全員を代弁していた。


それでも食ってかかろうとする安藤を、木崎涼子は首を振って制した。


目と目で通じ合うものがあるらしい。


下唇を悔しげに噛み締め、安藤が引き下がる。


恐らく__と、私は思った。


涼子は分かってるんじゃないか?


これは玉入れなんていう単純なものじゃない。負ければまた1人、失格者が出る。だからどんな手も使う。


さっきの綱引きがいい例だ。


それを遮る盾となった?自ら盾となり、健全な競技を行うよう、訴えかけたんじゃないか?


でも__甘いな。


甘すぎる。


これは勝ち負けなんだ。


負けは即ち【死】を意味する、運動会なんだから__。




< 108 / 453 >

この作品をシェア

pagetop