悪魔の運動会
【立花薫】
一体、なにを考えるのだろう?
カゴを背負っている木崎涼子を見やった。
私が疲れているからなんて、それはウソだ。私は疲れてなど居ない。ちょっと電気で痺れた程度で、今はもうなんともない。
それなのに__?
「おい‼︎なんで涼子がカゴを担いでるんだよ‼︎」
紅組から血相を変えて怒っているのは、安藤直人だ。
そりゃそうだろう。
普通なら男が背負うべきだ。自分の恋人が力を強いられるとあっては黙っちゃいない。
「知らねぇよ‼︎自分が担ぐって言ったんだからよ‼︎」
戸田裕貴の言葉は、全員を代弁していた。
それでも食ってかかろうとする安藤を、木崎涼子は首を振って制した。
目と目で通じ合うものがあるらしい。
下唇を悔しげに噛み締め、安藤が引き下がる。
恐らく__と、私は思った。
涼子は分かってるんじゃないか?
これは玉入れなんていう単純なものじゃない。負ければまた1人、失格者が出る。だからどんな手も使う。
さっきの綱引きがいい例だ。
それを遮る盾となった?自ら盾となり、健全な競技を行うよう、訴えかけたんじゃないか?
でも__甘いな。
甘すぎる。
これは勝ち負けなんだ。
負けは即ち【死】を意味する、運動会なんだから__。