悪魔の運動会
【相原友子】
「ちょっと‼︎やめなさいよ‼︎」
安藤くんに玉を手渡しながら、私は白組に向かって怒鳴った。
ほぼ初めっから、戸田裕貴と野々村哲也の2人は、カゴに玉を入れるのではなく、間宮くんを攻撃している。
勝負を捨てたのかと思ったが、その逆なんだ。
私たち紅組には、野球部が2人いて有利。それならカゴごと倒してしまえば__そう考えたに違いない。あまりに汚い作戦に、玉を投げ返してやりたいと思った。
「おい、やめろ‼︎」
安藤くんの怒鳴り声に、ビクっと体が震える。
それは、相手チームに言ったんじゃない。相手チームと張り合おうとした、西川浩二を止めたんだ。
「でも、やられてばっかじゃ__」
「それじゃ、お前も向こうのカゴを背負ってるやつに投げるのか?」
「いや、それは__」
「なんのために涼子がカゴを背負ったと思ってる?」
歯を食いしばって、重みに耐える木崎さん。それは、勝負を有利にするためじゃ?だって、こっちは彼女にボールをぶつけるなんてことはできない。
それが分かっててカゴを背負ったんじゃ?
「涼子はただ、みんなにクリーンに戦ってほしい、そう願ってるはずだ。潰し合うんじゃなく、あくまで競技として。あいつはそういうやつだ。だから俺は応えたい」
安藤くんが、カゴに向かって玉を投げる。
私は彼の手に、玉を手渡す。
けれど、綺麗事は脆い。
呆気なく、クリーンな戦いは終止符を迎えた__。