悪魔の運動会
【小林健】
くそっ‼︎
くそくそくそっ‼︎
玉をカゴに投げ入れるたび、俺は毒づいた。それで何かが解消されるわけではないが、何もしないよりマシだった。
なんで俺だけ?
自分の不運を呪う。
紅組を見ると、野球部の笠井周平と西川浩二が競い合うようにして玉を投げていた。そんな2人に甲斐甲斐しく玉を手渡すのは、マネージャーの久米茜。
俺だって野球部じゃん‼︎なんで俺だけハブなわけ?
気持ちが腐っていくのも仕方ない。
1人孤独にカゴに玉を放る。
「おい野球部、お前に良いもんやるよ」
「えっ⁉︎」
ギョッと身を引いた。
さっきまで、相手チームの間宮旬を執拗に狙っていた戸田裕貴が、馴れ馴れしく肩を組んできたからだ。
その横っ面を玉が直撃しても、間宮は倒れない。
段々、裕貴がイラついてきたのが傍目からも分かった。
できる限り、近づかないようにしていたのだが__?
「野球部のお前に、見せ場をやるよ。これでカゴを倒せば、お前は英雄だ」
「いや、でも俺は間宮を狙うなんて__」
「ばーか。誰も本人に当てろって言ってねーよ。これでカゴを狙えばいいんだよ、カゴを」
不敵に微笑みながら、手の中の玉を差し出した。
顔を狙っても陥せなかったんだ。カゴを狙ったところで今さら__と思いつつ、反射的に玉を受け取った。
「な、なんだよ、これ__」
その玉は、鉛のように重かった。