悪魔の運動会
「できるよな?」
裕貴が顔を覗き込んでくる。
ニヤついてはいるが、その目は笑っちゃいない。
「でも__」
「できねぇーって言うんなら、次、お前が落ちるだけだ。どっちみち向こうのカゴを倒さねーことには、こっちが負けるからな」
それは間違いではない。
恐らく倍近い数の差がある。
「ま、やるかやらねーかは、お前に任せた。じゃな」
ポンっと肩を優しく叩いて、行ってしまった。その優しさが逆に恐ろしい。
やると決めつけてるんだ。
出来ないことはない。重たいが、砲丸ほどじゃないから、カゴに当てることはできる。でも、危なくはないか?もし誰かに当たりでもしたら__。
「浩二‼︎俺のが一個多いぜ!」
「周平、ちげーって!俺が三つリードしてる‼︎」
「2人とも、真面目にやって‼︎今、同じ数だから!」
紅組から聞こえてくるのは、こんな時なのに仲睦まじい野球部連中の声だった。
俺がこんなに孤独だってのに__。
ズシリと、玉の重みが増したような気がした。
手に慣らすため、何度か軽く宙に投げ上げる。
俺の肩は、誰より強い。強肩(きょうけん)の健だからな。
狙いを定め、丸く円を描くように玉を放り投げた。
そのまま鉛玉は、白組のカゴに風穴を開ける。