悪魔の運動会


事態が飲み込めない。


それは俺より、本人かもしれないが__。


「うそ、うそ」


それだけを繰り返し、首を振る。


残酷な現実を振り払うように、だが、犬と猿が仲良くやってきた。


悲鳴を上げることも、泣くこともできず、ただ震えるだけの植松理沙を連れていく。


直人と相原、2人と目が合った。


寺脇リカに入れたのは、植松理沙だ。それ以外は全員が理沙に入れたっていうのか?


ほぼノーマークだった理沙に?


「寺脇さん、大丈夫よ。大丈夫だから」


相原が、すすり泣きで肩を小刻みに震わせている、寺脇リカを勇気づける。


いつもの構図だ。


相原はずっと、リカを気にかけていた。クラスに馴染めない同級生を励まし、少しでも溶け込めるように頑張っていた。


だからか?


リカが気の毒だから、野球部のやつらは全員が理沙に入れた?


もし投票するなら、最後に重い玉を放った、笠井周平に入れるべきじゃ?


全員が示し合わせた?


直人への協力をシカトし、自分たちが助かるために?


「寺脇さん、もう泣かないで」


優しく声を掛けるが逆効果なのか、リカの肩の揺れは激しくなるばかり。


どんどんどんどん、激しくなっていく。


今や机や椅子も、ガタガタと音を立てていた。


もう、手に負えないほどに。


「て、寺脇さん?」


その時、ガバッとリカが顔を上げた。






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